ゲームのUI/UXから学ぶ、日常の「わかりやすさ」と「使いやすさ」を高める遊び心
日々の生活は、時に思い通りに進まず、小さなストレスが積み重なることがあります。特に家事や育児に追われる中で、「あれはどこに置いたかな」「次に何をすればいいんだろう」といった「わかりにくさ」や、「なんだかやりにくいな」という「使いにくさ」に直面すると、さらに負担を感じてしまうかもしれません。
このような時、私たちはゲームの仕組みからヒントを得ることができます。ゲーム開発者が、プレイヤーが快適に、迷うことなく楽しめるように設計する「UI/UX」の考え方を、私たちの日常生活に取り入れてみるのです。これは、日常を少し「デザイン」してみる、一種の「遊び心」と言えるでしょう。
ゲームのUI/UXとは何か
UIとは「ユーザーインターフェース」、UXとは「ユーザーエクスペリエンス」の略称です。 ゲームにおけるUIは、画面上の情報表示(体力ゲージ、マップ、アイテム一覧など)、操作ボタン、メニュー画面といった、プレイヤーがゲームとやり取りするための接点を指します。 一方、UXは、プレイヤーがゲームを通じて得られる「体験」全般を指します。操作の快適さ、目標のわかりやすさ、達成感、そしてプレイ中の感情なども含まれます。
良いUI/UXデザインが施されたゲームは、プレイヤーを迷わせることなく、スムーズにゲームの世界に入り込ませ、快適なプレイ体験を提供します。逆に、UI/UXが悪いと、操作に戸惑ったり、必要な情報が見つからなかったりして、ストレスを感じ、ゲームを楽しむどころではなくなってしまいます。
私たちの日常生活も、ある意味で自分自身が主人公としてプレイするゲームのようなものです。そこには様々な情報があり、こなすべきタスクがあり、そして体験があります。この日常をより快適に、「プレイ」しやすくするために、ゲームのUI/UXの考え方を応用してみましょう。
ゲームUIの考え方を日常に応用する
ゲームUIの役割は、必要な情報を分かりやすく、必要なタイミングで提供し、プレイヤーの操作を助けることです。これを日常に当てはめてみます。
情報の整理・視覚化
ゲーム画面のHUD(体力や所持金などの常時表示情報)やインベントリ(持ち物リスト)のように、日常生活でも必要な情報を「すぐに」「わかりやすく」確認できる状態にすることで、探し物の時間や判断の迷いを減らすことができます。
- アイデア例:
- 冷蔵庫の中身を写真やリストにして扉に貼る。
- 週の献立をキッチンにボードなどで見える化する。
- 子供の学校や習い事の持ち物リストを玄関近くに貼る。
- 書類や小物にラベリングをして、どこに何があるか一目でわかるようにする。
操作の単純化・直感化
ゲームでは、複雑な操作をボタン一つで実行できたり、よく使う操作が直感的に行えたりします。日常生活でも、動作をより簡単でスムーズにする工夫を取り入れます。
- アイデア例:
- よく使う掃除道具を各部屋に置く、あるいはすぐに手に取れる場所に収納する。
- 家事の「ついで」にできることをリストアップし、動線を考える。
- よく使うアプリをスマホのホーム画面にまとめるなど、情報機器のUIも整理する。
フィードバックの明確化
ゲームで敵を倒した時やアイテムを入手した時などに効果音やアニメーションがあるように、自分の行動やタスク完了に対する「手応え」を意図的に作ることで、達成感を得やすくなります。
- アイデア例:
- タスクリストの完了項目に大きな丸印やチェックマークをつける。
- 小さな家事が終わるたびに「よし!」と声に出す、あるいは心の中で唱える。
- 設定した時間内に作業が終わったら、自分への小さなご褒美(好きなお茶を淹れる、短い音楽を聴く)を用意する。
ゲームUXの考え方を日常に応用する
ゲームUXの役割は、プレイヤーが全体として快適で楽しい体験を得られるように、ゲームの流れや雰囲気を設計することです。これを日常の「体験の質」を高めることに応用します。
目標への導線設計
ゲームのクエストマーカーや次に進むべき場所を示すガイドのように、日々のタスクや目標へ迷わずたどり着けるような道筋を作ります。
- アイデア例:
- 朝起きてから出かけるまでのルーチンを「クエスト」に見立てて、次の行動が自然にわかるように配置や準備を整える。
- 料理の手順を書き出して、それに沿って材料や調理器具を並べておく。
- 「やることリスト」を具体的なステップに分解し、何から始めればいいか明確にする。
ストレスの軽減・楽しさの向上
ゲームがプレイヤーを飽きさせない、イライラさせないために様々な工夫(待ち時間の工夫、失敗時のヒントなど)をしているように、日常生活のストレス要因を減らし、ポジティブな感情を生み出す工夫を取り入れます。
- アイデア例:
- 苦手な家事は好きな音楽やラジオを聴きながら行う。
- 育児で大変な時は、過去の楽しかった出来事を思い出したり、可愛い写真を見返したりする時間を作る。
- 完璧を目指さず、「今日はここまでできれば十分」と区切りをつける。
全体的な体験の質
ゲーム全体が提供する「面白さ」「没入感」「心地よさ」のように、日常生活全体を一つの体験として捉え、「もっとこうしたら気持ちよく過ごせるかな」とデザインしていく視点です。
- アイデア例:
- 家全体の「動線」を意識して家具の配置や収納場所を考える。
- 朝の光を取り入れる、好きな香りのアロマを焚くなど、五感に訴えかける心地よさを追求する。
- 一日の中で「何もしない時間」や「ぼーっとする時間」を意識的に作り、心に余白を作る。
子育てにおけるUI/UX的遊び心
子育ては、文字通り子供が世界を「体験」するプロセスです。親は子供にとっての「UI/UXデザイナー」のような役割を担うとも言えます。
- アイデア例:
- 子供に頼みごとをする時、「〜してね」だけでなく、「お片付けのお手伝いお願いできるかな?(クエスト発生!)」のように、少し遊び心を加える。
- 子供のおもちゃ収納を、子供自身が「使いやすい」「片付けやすい」ように工夫する(箱に写真をつける、種類別に分けるなど)。
- 「できた!」を親子で一緒に喜ぶ(ハイタッチする、カレンダーにシールを貼るなど、視覚的・聴覚的なフィードバック)。
- 子供のペースや興味に合わせて、活動の「難易度」を調整する。
まとめ
ゲームのUI/UXは、プレイヤーがゲームの世界を快適に、そして最大限に楽しめるようにするための様々な工夫の集まりです。この考え方を私たちの日常生活に応用することで、日々の「わかりにくさ」や「使いにくさ」を減らし、よりスムーズで心地よい体験を作り出すことができます。
これは、日常生活を「デザイン」するという、新しい形の「遊び心」です。大掛かりなことではなく、冷蔵庫の整理の仕方一つ、書類の置き場所一つから始めることができます。身の回りの小さな「UI/UX」を改善していくことで、忙しい毎日が少しずつ、しかし確かに快適になっていくのを感じられるでしょう。
さあ、あなたの日常という「ゲーム」のUI/UXを、今日から少しずつデザインし始めてみませんか。