ゲームの「オート機能」や「おまかせ」から学ぶ、忙しい日常で「上手に手抜きをする」遊び心
日々の暮らしは、果てしないタスクの連続のように感じられることがあります。特に、子育てや家事に追われる中で、「全てをきちんとこなさなければ」という思いから、心身の疲労を感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、完璧を目指しすぎることが、かえって自分自身を追い詰めてしまう場合もあります。
ゲームの世界には、このような状況を乗り越えるためのヒントが隠されています。今回は、多くのゲームに見られる「オート機能」や「おまかせ」といった仕組みから、忙しい日常を賢く、そして遊び心を持って乗り切るための「上手に手抜きをする」という視点について考えてみます。
ゲームの「オート機能」「おまかせ」が示すもの
近年のゲーム、特にスマートフォン向けのRPGやシミュレーションゲームなどでは、「オートバトル」や「自動周回」、「おまかせ編成」といった機能がよく搭載されています。これらの機能を利用すると、プレイヤーが細かな操作をしなくても、キャラクターが自動で敵と戦ったり、特定の作業を繰り返したりしてくれます。また、「おまかせ」機能では、ゲームが推奨する設定や組み合わせを自動で行ってくれます。
なぜ、ゲームはプレイヤーに「全てを自分で操作する」ことを求めないのでしょうか。これは、ゲームデザインにおいて、プレイヤーの負担を軽減し、ゲームプレイの効率を高め、より戦略的な側面に集中できるようにするためです。つまり、「オート機能」や「おまかせ」は、ゲームをより快適に、そして面白く続けるための「賢い手段」として存在しています。全てを自分でコントロールすることだけが価値ではない、という考え方を見出すことができます。
日常生活における「完璧」という負荷
このゲームの考え方を日常生活に当てはめてみましょう。家事や育児、仕事など、日々のタスク全てにおいて完璧を目指そうとすることは、多大な時間とエネルギーを消耗します。例えば、料理は全て手作りでなければならない、部屋は常に整理整頓されていなければならない、子供の相手は常に全力でなければならない、といった思い込みが、自分自身をがんじがらめにしてしまうことがあります。
限られた時間や体力、気力の中で全てを完璧にこなそうとすると、達成できないことに罪悪感を覚えたり、余裕のなさからイライラしたりすることにつながりかねません。これは、ゲームで言えば、効率の悪い方法に固執したり、無駄に難しい操作を繰り返したりして、肝心な「楽しむ」という目的から遠ざかってしまう状態と似ているかもしれません。
ゲームの視点から学ぶ「手抜き」の遊び心
ゲームの「オート機能」や「おまかせ」は、「目的達成のために、必ずしも全ての工程を自分自身で詳細に実行する必要はない」ということを教えてくれます。この考え方を日常に取り入れることが、「上手に手抜きをする」という遊び心につながります。
ここで言う「手抜き」は、決してサボることや義務を放棄することではありません。それは、「最も重要な目的(家族の健康や幸福、自分の心身の安定など)のために、それ以外の工程は効率化したり、他者に任せたり、基準を緩和したりする賢い選択」と捉え直すことです。
これは、ゲームにおける「効率的なレベル上げのためにオートバトルを使う」「難しい編成を考える時間を省くためにおまかせ機能を使う」といった行為と同じ構造です。全てを自分でコントロールしようとせず、時には流れに任せたり、既存のシステムや他者の力を借りたりすることで、本来使うべきではないリソース(時間や体力)を節約し、本当に大切なことに使う余裕を生み出すのです。
「手抜き」をネガティブな言葉としてではなく、「日常を賢く攻略するための戦略」「自分自身を守るための工夫」として捉え直す視点こそが、「遊び心」なのです。
日常への具体的な「手抜き」応用アイデア
ゲームの「オート機能」や「おまかせ」発想を、忙しい日常に取り入れる具体的なアイデアをいくつかご紹介します。
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家事における「ツール活用」と「外部リソース利用」:
- ゲームで自動化ツールを使うように、食洗機、ロボット掃除機、乾燥機付き洗濯機などの家電を積極的に活用します。これらは「家事のオート機能」と言えるでしょう。
- ゲームでアイテムを購入したり外部の協力を得たりするように、惣菜、ミールキット、冷凍食品、食材宅配サービス、家事代行サービスなどを上手に利用します。全てを手作りすることにこだわらず、時短や労力削減を優先します。
- 「今日の夕食はおまかせ(惣菜にしよう)」と、潔く決めてしまう日を設けることも有効です。
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育児における「役割分担」と「基準緩和」:
- ゲームでパーティーメンバーに役割を振るように、夫や家族、親、地域のサポート、保育サービスなど、頼れる人に積極的に協力を求めます。一人で抱え込まず、チームで育児に臨む意識を持つことが大切です。
- ゲームで初心者向けの難易度設定があるように、育児や家事の「完璧の基準」を意図的に下げてみます。例えば、子供のおもちゃは完璧に分類せずとも、一時的に一つの箱に入れるだけにする。部屋全体の掃除ではなく、目につく場所だけさっと片付けるなど、状況に応じた「ちょうど良い」ラインを設定します。
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自分時間・リフレッシュにおける「意図的な停止」と「簡略化」:
- ゲームで一時停止して休憩するように、忙しい合間に意図的に「何もしない時間」や「短い休憩」を設けます。
- ゲームで簡単なミニゲームで息抜きするように、リフレッシュ方法も凝ったものにする必要はありません。短いストレッチ、好きなお茶をゆっくり飲む、数分間瞑想するなど、手軽にできることで気分転換を図ります。
- 情報収集や手続きなど、スマホやアプリで自動化・簡略化できるものは積極的に利用し、思考や作業の「おまかせ」化を図ります。
「手抜き」を「遊び心」として楽しむために
「手抜き」という言葉に抵抗を感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、これを「どうすれば最小限の労力で、心地よく日常を回せるか?」というゲーム的な攻略、あるいは「自分というキャラクターのHPやMPを効率的に回復・維持するための戦略」として捉え直してみると、取り組み方が変わってくるかもしれません。
「今日は家事のオートモード発動!」 「このタスクはおまかせでクリア!」
このように、少しゲームの世界観を取り入れて言葉にしてみるだけでも、ネガティブだった「手抜き」が、日常を面白くするための「遊び心」へと変化します。そして、手抜きで生まれた時間や心のゆとりを、本当に大切なこと(子供との笑顔の時間、自分のための休息、新しい学びなど)に使うことができれば、日々の満足度はきっと高まるでしょう。
まとめ
ゲームの「オート機能」や「おまかせ」は、私たちが日常生活で陥りがちな「全てを自分で完璧にこなさなければ」という思い込みから解放されるヒントを与えてくれます。上手に手抜きをすることは、決して怠慢ではなく、限られたリソースの中で最大限の成果(心身の健康、家族の幸福)を得るための賢い戦略であり、自分自身を大切にする行為です。
完璧ではない日常の中にこそ、創意工夫や柔軟な対応が生まれる余地があり、それが「遊び心」につながります。ゲームのように、時には「オート」や「おまかせ」に頼りながら、自分にとって心地よいペースで、日々の暮らしを攻略していく視点を取り入れてみてはいかがでしょうか。